頸城・火打山から雨飾山

2015年10月16日(金)〜18日(日) 参加者:4名

  • 訪れる人の少ない頸城の縦走路を歩いて来ました。
  • 火打山から雨飾山笹平までの間に出会った、焼山日帰り以外の登山者はわずか3名でした。
  • 静かな山と、晴天に映える紅葉、素晴らしい星空を愛でつつも、体力・気力・技術を試される厄介な縦走路に鍛えられた山旅でした。

10月16日
 笹ヶ峰のバス停から少し戻って、火打山登山口を出発する。広い駐車場があるが、ほぼ満杯だ。道は緩やかに、紅葉の林の中を登っていく。テント装備の荷物が肩に食い込む。それでもコースタイム通りに黒沢の橋に到着する。黒沢の紅葉も美しい。橋も立派なものに変わっていた。
 黒沢で小休止の後、急登の十二曲りに向かう。割とあっけなく登りきり、あとは富士見平を経由して、今宵の宿、高谷池ヒュッテに向かうだけだ。黒沢岳の巻き道からは、明日登る火打山や焼山がよく見えた。
 高谷池ヒュッテは金曜日の今日も満員。食事は2回。もともと自炊小屋だったせいか、自炊設備が整っている。ガスレンジや鍋、食器が使い放題だ。ありがたい対応だ。
 また細い三日月が沈んだあとの空は素晴らしい星空で、夏の名残の南天銀河や夏の大三角が夜空を彩っていた。
〈今日の行程〉 笹ヶ峰(10:33)ー(11:30)黒沢(11:42)ー(13:08)富士見平(13:22)ー(14:02)高谷池ヒュッテ

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10月17日
 夜明け前、相変わらずの素晴らしい星空に魅了された。朝食の後、素晴らしい快晴のもと火打山に向かう。天狗の庭からは火打山が水鏡に美しい姿を映し、湿原の草紅葉にはすっかり霜が降りている。そしてこれから向かう焼山にだけ雲がかかっている。水蒸気の吹き出しが激しいのかと少し不安になる。
 火打山の頂上に近づくと、にわかに霧が巻いて周囲が見えなくなってしまった。足元には数日前に降ったという新雪が残り、時に凍って歩きづらいところもある。それでも順調に山頂に到着した。山頂で休んでいると一瞬だが急に視界がひらけて北アルプスが見えたが、山座同定のいとまもなく再び霧に隠れてしまった。さてここからは人通りの少ない、静かな縦走路だ。
 影火打までは緩やかな道だが、どこだかわからない影火打を過ぎると道は急降下していく。最低鞍部の胴抜キレットまで時に急峻な岩場もある、滑りやすい道を下っていく。滑ったらまずい場所は随所にある。
 胴抜キレット周辺にはナナカマドが群生して、すっかり葉は落ちているが、赤い実が一面に広がっていた。ここからは焼山に向かって、激しく急な道を登っていく。一歩一歩のステップが遠くて体力を消耗する。一直線に登っていくが、もうヘトヘトだ。やっとの思いで登りつめ、道が斜面を巻き始めるとようやく頂上が近づく。荒涼とした頂上稜線にでるとなんだか落ち着かない道になる。両脇には噴火口のような窪地がいくつもある。一年前の木曽御岳の映像が思い出される。
 三角点を少し行き過ぎたところに山名を記した金属製のプレートがあり、そこが頂上のようだった。すぐ隣には最高点と思われる小さな岩峰があった。記念撮影の後、荒涼とした頂上を後にする。道はますます険しく、溶岩の急斜面が続く。そんな中、3羽の雷鳥に出会う。火打山にいるのは知っていたが、焼山にも生息しているとは。それとも火打山の個体が遠征してきているのか・・・。
 急峻なロープ場を慎重に下り、溶岩が積み重なる斜面を落石を起こさぬよう静かに降りて南寄りの斜面に回りこむと、ようやく少し安心できる道になった。やがて泊岩の岩屋前に出た。内部は発泡スチロールが敷き詰められ、なかなか快適に過ごせそうな状態だ。だが、すぐ隣りの岩の下には多量のゴミが捨てられていて憤りを覚える。真新しいレジ袋もまるで隠すように捨てられている。こんな人里離れた玄人っぽい山にもマナーのなっていない登山者がやってくるのかと、一同かなりがっかりした。
 泊岩からは更に下って、富士見峠のテントサイトまで。テントサイトは比較的平らな20平米ほどの広さで、小さなテントなら3〜4張りは張れそうだ。南側は展望が開けており実に快適な場所だ。ただ、昭和49年ここで噴火にあい噴石に当たって3名の学生が亡くなったという過去がその快適さをスポイルする。またすぐ西側の窪地に水を求めて降りてみたが、流水は確認できず、わずかに綺麗な溜水があるだけだった。この水を濾して炊事に使ったが、やはり火山だけあって、保水力は弱い土壌なのだろうか。安定した水場が欲しいものだ。
 夜はまたしても素晴らしい星空だった。テントから顔を出すだけで視界は星の洪水だ。
〈今日の行程〉 高谷池ヒュッテ(6:20)ー(8:11)火打山(8:17)ー(10:58)焼山(11:12)ー(12:33)富士見峠

10月18日
 今日も素晴らしい天気だ。夜明け前、まさに満天の星が夜空を埋め尽くしていた。そんな中、まだ真っ暗な、テント撤収もやりにくい時間帯に、一人の登山者がヘッドランプを灯して歩いてきた。昨夜は泊岩に一人で泊まったという。我々の行程を先行して歩いて行くそうだ。
 さて私達も出発だ。朝日に赤く照らされた稜線を金山目指して歩いていく。浅間山に噴煙が上がっている。八ヶ岳の隣には、うっすらと富士山の姿も見える。刈り払いの行き届いた道を金山頂上から見る北アルプスの展望を楽しみに登っていく。振り返れば焼山の激しい山容が目に入る。昨夜のテントサイトが見えるが、もしこちら側に噴火したらひとたまりもない場所かとも思える。犠牲者の冥福を祈ろう。
 やがて快晴の空のもと、金山の頂上に立つ。一気に西側の展望が開ける。北アルプスが槍穂高から白馬、雪倉まで全部見える。不帰キレットの上には真っ白な立山連峰が顔を覗かせている。後立山はそれほど白くない。小休止ののち、いよいよ雨飾山への茂倉尾根に歩みを進めていく。
 下り始めると、目線のやや下方に最終目的地雨飾山が見える。頂上直下の壮絶な岩場「布団菱」が大迫力だ。茂倉尾根もしっかり刈り払いがなされており、登山道は明白だ。だが、歩く人が少ないせいか道は定まっておらず、急斜面では崩れて滑り落ちそうになる。いくつもの小ピークを越えていくので、かなり体力的には堪える。また前日十分な水が確保できなかったので、大曲の水場がどうなっているか、とても心配だった。
 だいぶ消耗しながらも、なんとか大曲の鋸岳方面分岐にたどり着く。するとすぐ脇に僅かな流水の小沢があり水の補給ができた。好天で暑いので水は貴重だ。水量は少ないがこの水場は縦走路のオアシスである。
 さてここからは最後の急登だ。少し登っては背後に見える今日の行程、来し方を眺める風情で休憩する。本当は足があまり上がらないのだ。それでも1時間ほどの苦闘の末、呆れるほどの人出の笹平に到着する。分岐にでる寸前は、こちらの登山道が日帰り登山者のキジ場になっているので、かなり臭い。自治体の対応が必要ではないだろうか。将来大曲の水場が汚染される可能性はないだろうか?
 ここからは多くの登山者と行き交いながら雨飾山頂上へと急ぐ。途中の雨飾山荘、糸魚川方面の分岐に荷物をデポして、山行最後の頂上へ登る。頂上からは焼山と火打山、金山が見渡せる。充実感に浸りながら四囲の眺めを堪能したいところだが、頂上も大混雑。結局写真を撮って早々に山頂を辞す。デポ地に戻って休憩している間、通過する登山者のすべてが小谷村方面から登ってきて、かつ下山していく。どこの深田百名山もそうだが、一番ラクなルートばかりに人が集中して、歴史ある他の道が廃れていく。罪な話だ。
 私達は誰も降りて行かない雨飾山荘への道を下る。ひたすら下る。途中で3パーティを追い越し、下山ルートという消化試合のようなコースにはもったいないような素晴らしい紅葉を愛でながら、温泉入浴を求めてグングン下る。2時間足らずで下山してお待ちかねの温泉に浸った。山荘周辺も素晴らしい紅葉で、今回の山行は最初から最後まで秋の風情を満喫することができた。疲れるけれどとても素敵な縦走路だ。今後も焼山が怒って火を吹かぬよう祈ろう。
〈今日の行程〉 富士見峠(6:04)ー(7:21)金山(7:39)ー(11:50)雨飾山(12:03)ー(14:31)雨飾山荘 

O. 記

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