裏岩手縦走 ー八幡平から岩手山ー

2016年7月1〜3日(日) 参加者:6名(1名は岩手山のみ)

  • 昨年雨で断念した裏岩手縦走山行です。
  • 最後の岩手山に登りかかるまではまあまあの天候でした。
  • 最終目的地の岩手山は強風で登頂を断念し、予定を変更して御神坂登山口へ下山しました。

1日 晴れ
八幡平頂上駐車場11:14ー八幡平頂上11:34〜36ー大深山荘15:48 (実働3時間35分)
 盛岡駅に集合して八幡平へのバスに乗る。JRの格安切符のせいか、東北を訪れる観光客が多いようで、平日にもかかわらず増発バスが出る。快適な観光バス車両で、八幡平頂上(バス会社の人は「はっちょう」と呼んでいた)に着き、まずは今回の縦走の起点、八幡平頂上に向かう。
 頂上の展望台で、ひとりきり周囲を眺めてから、バス停のレストハウスに戻り、昼食を摂る。そしていよいよ本格的な縦走の開始である。少しバス道路を歩き、藤七温泉近くで裏岩手縦走路に入る。と目指す畚岳頂上に何やら多数の人影のようなものが見える。この時刻にあんなところにいるわけ無いよ、樹だよ、と衆議一決するが、やがて前方より賑やかな子供たちの声。畚岳の分岐で幼稚園の遠足に出くわす。頂上に引率の大人たちが見えていたのだ。狭い登山道ではすれ違いができず、子供たちが分岐に到着するまでしばらく待機して、ようやく歩き出す。少し登ったところで畚岳は往復になることに気づいて、各自重荷を放り出して空身で頂上へ。
 畚岳の頂上からは、これから向かう岩手山への道がよく見えた。明日、天候が悪化するまでに着けるのか?遥かな道のりに、ちょっと不安感を覚える。畚岳をくだり、縦走路に歩みを進めると周囲は花の道、かつ湿原や湖沼のある潤いの道だ。水っぽいところには木道が完備して実に快適に歩ける。それほど派手な登り下りもなく、よいペースで進んでいける。唯一、嶮岨森の前後は岩場の道で、ここが登山道であって遊歩道ではないことを思い出させてくれる。そしてやがて大深岳から源太ヶ岳の大きな山腹に、今日の泊まり場、大深山荘が見えてきた。
 大深山荘は清潔で綺麗な本当に素敵な避難小屋だった。水場も数分の距離にあり、しかも湿原の真ん中、小屋備え付けのサンダルでも行けてしまう。素晴らしい条件の無人小屋で、何度でも泊まりたいという気分になる。今夜の同宿者は我々より少し若い女性が一人。一人で無人小屋に泊まる覚悟で来たようで、その度胸に敬服する。

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2日 曇りのち晴れのち暴風雨
大深山荘4:15ー三ツ石山荘7:01〜20ー岩手山八合目避難小屋13:40 (実働7時間30分)
 午前3時起床し、朝食後夜明けとともに出発した。今日は午後から雨の予報で、雨の前に16キロあまりの長い道のりをどこまで行けるかで今回の山行の印象は大きく変わる。昨日と同様、大きな上り下りのないなだらかな道をひたすら距離を稼いでいく。森林限界を越えたり戻ったりしながら、周囲の花々を愛でながら進んでいく。すると徐々に展望が開け始め、目指す岩手山や隣の秋田岩手県境尾根、すなわち秋田駒ヶ岳への縦走路が見えてくる。次は避難小屋3泊で秋田駒への縦走だね、などと言いながら進んでいく。
 やがて三ツ石山に到着する。ちょっとした岩峰になっており展望が良い。すると流れる霧の合間に、ポッカリと円形に木立が途切れ、その中に湿原池塘が広がる夢のようなところが見えた。栗木ヶ原と言うらしい。沢を登れば行けるだろう。東北の山は宝探しのようだ。行きたい場所が次々に現れる。
 三ツ石山を下ると、今日最初のランドマーク、三ツ石山荘だ。この小屋も綺麗で素晴らしい。周囲には湿原池塘が広がり、環境は抜群だ。ただ水場が不安定らしいのが、欠点のようだ。この頃には周囲はガスもとれ、陽光が降り注いで暑くなってきた。案外天気は良いのかと、だいぶ期待した。
 三ツ石山荘からも再び起伏の少ない道が続いている。しかしやがて岩手山が望めると頂上には笠雲がかかっている。天候悪化は間違いないようだ。あとはどこで雨に出会うかだ。万が一雨に当たったり風が強くなると鬼ヶ城コースは危険と判断し、岩手山にはお花畑コースで登ることにした。
 そのお花畑コースへの分岐点の直前で、遂に雨が降りだした。みんな雨具の準備をして、地獄谷に下りしばらく沢伝いの道を緩やかに登っていく。やがてお花畑の中の平笠不動避難小屋への分岐点から岩手山への登りが始まる。雨は徐々に強くなり、土砂降りに近い雨降りになる。休憩する場所も無いのでひたすらゆっくりと登っていく。それでも案外すんなりと頂上直下の不動平に登りついた。とその頃には雨も小降りになってきた。女性陣が濡れた衣類を着替えたいと言うので、誰もいない不動平の避難小屋で身支度を整え、ほとんど雨は止んだが、風の強い中を八合目避難小屋に急いだ。
 こんな天候だが、小屋には数組の宿泊者がいた。濡れモノをストーブの近くに干したり、自分の寝場所を確保したりした後、食事の準備のため外の水場に水を汲みに行く。すると濃霧の中から、電脳登山部会員のY氏が「ヤッホー」とニコやかに現れた。どうも最近東北に行くと、Y氏が現れる。しかも差し入れを持って。聞けば御神坂登山口を出て1時間で雨に捕まって、ずっと雨の中を登ってきたそうだ。小屋の中で、差し入れをいただく。小屋にあるかと期待していたが、なくて皆で残念がっていた「ビール」と日本酒「「獺祭」。いつもながらありがたい。
 ちなみに今回食事は共同装備だった。係が無洗米を炊いていると、小屋の従業員の方が我々のだし袋を使った「湯取法」での炊飯に興味津々。登山での食事に何かと苦労しているそうだ。コメの炊き方を解説して、Y氏が炊いたコメを今夜の夕食「三色丼」にして少し提供する。今回標高1700メートルでの炊飯時間は水から加熱して沸騰時間22分で完璧だった。
 20時消灯。以降は激しい暴風雨が夜半過ぎまで続いた。

12日 雨後曇り
八合目避難小屋6:19ー御神坂登山口9:36 (実働2時間57分)
 日付が変わる頃、雨音が止んだ。相変わらず風の音は激しいが、このまま夜明けを迎えれば風も収まって予定のコースを歩けるかもと、寝ぼけマナコで考えた。しかし、起床してみると風はまだまだ収まらず、何時収まるかもわからない風を待つこともできず、安全性が高くバスの便がある御神坂登山口へ下山することにした。岩手山頂上付近が暴風で通れなければ予定のコースには入れないのだ。
 小屋から不動平、そして鬼ヶ城コースの分岐を経て、森林限界に近づくまで、南寄りの風が激しく吹き続けていた。うっかりすると吹き飛ばされそうな勢いで、時には岩に掴まって風をやり過ごさねばならないこともある。勿論展望も無いのでただただ足元に気をつけて下るだけだった。
 森林限界の下に入り、幻の大滝を見るあたりでようやく緊張感から解放された。あんな大雨のあとだが、火山のせいか、水はけが良いようで道はぬかることもなく歩きやすいところが多い。グングンと下って3時間あまりで登山口に降り立った。ここの登山口には綺麗なトイレと休憩舎があり、ここで身支度を整えて盛岡行のバスを待った。
 盛岡駅では一昨日、岩手県北バスの社員さんに「ウマイ」と聞いた駅前の焼肉店で、盛岡名物冷麺を食べながら山行の終了を祝って乾杯した。最後は雨にたたられたが、裏岩手縦走路は素晴らしいトレイルと参加した皆様の心に刻まれたことだろう。さて次の東北山行はいったいどこへ・・・・・?

 Script by O. and Photo by O. and Y.(Y)

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