2016年9月22〜25日(日) 参加者:4名
- 雨のため登る順を変更して、予定の二百名山三座に登頂しました。
- いずれの小屋も素晴らしく綺麗で、快適に過ごせました。
- 森吉山では少し、神室山ではかなり水場に苦労しました。
22日 曇り後雨
東北新幹線古川駅8:20=森吉山阿仁ゴンドラ山麓駅14:07=頂上駅14:31ー森吉山阿仁避難小屋15:11〜15ー森吉山頂上15:37〜41ー阿仁避難小屋(泊)16:00(水場往復10分) (実働1時間19分)
今日の午後から明日にかけて天気予報は雨。そのため行動時間が短く雨でも何とかなりそうな森吉山に登ることにして、集合場所の古川駅から長駆秋田県北部まで足を伸ばした。実を言うと、森吉山の阿仁ゴンドラは、9月中は土日祝日しか動かないことについ最近気づいたこともその理由だ(10月になると毎日運行)。
ひたすらクルマを走らせること5時間あまり、ようやく駐車場に到着して、山麓駅で登山届を提出してゴンドラに乗る。夜間駐車場にクルマがあると登山届と照合して、予定通りに下山していないことがわかると警察に連絡するそうだ。ゴンドラはブナ林を見ながら20分ほどで標高1200メートル近くまで我々を運んでくれた。
まだ雨は降らない。頂上駅からは木道混じりの明瞭な道を阿仁避難小屋まで一投足。荷物を置いて直ちに森吉山頂上に向かう。濃いガスの中、頂上の標柱とともに写真に収まり、すぐに下山した。雨の降り出しと競争しているかのようだ。さらに小屋の東側から笹を分けて水場への道に入る。入り口はヤブっぽいが、すぐに木で階段状に組んだステップがあり、ここが水場への道とわかる。ほどなく沢に降り立つと、ほぼたまり水なのだがわずかに流れている。コップを持参しなかったのは大失敗。何とか細い流れを見つけてだいぶ時間をかけて水汲みをした。
小屋に戻ってしばらくすると雨が降りだした。小屋は我々だけの貸切。荷物を広げて夕食の支度をしていると雨は本降りになった。明日の下山は雨の中と覚悟を決める。
---- 小さな写真をクリックすると大きな写真が見られます。写真をスクリーンショーにして見ることもできます。 ---- |
23日 雨後曇り
阿仁避難小屋7:19ー山頂駅ーブナ帯キャンプ場ー山麓駅駐車場9:30=焼石岳中沼登山口14:41ー銀名水避難小屋(泊)16:36 (実働2時間+1時間45分)
夜の間はずっと雨が降り、間断なく雨音が聞こえていたが、朝になると雨はやや小降りになった。時間が経てば経つほど状況は好転するだろうが、そうも言っていられない。朝食後、雨支度をして下山の途につく。それほど酷い降りではなく、昨日は見えなかった森吉山の頂上もよく見える。
頂上駅からはブナ帯キャンプ場へ足元に気をつけながら下っていく。あまりぬかるんでいなくて助かった。周囲は雨にしっとりと濡れた原生林だ。紅葉時期ならさぞかし美しいだろう。そんな時期に再訪したいものだ。キャンプ場からは砂利道の林道をかなり遠回りしながら歩く。黒毛牛が放牧されているので道の両側には鉄条網が張られて、ショートカットはできない。いつの間にか雨は止み、駐車場に到着した。
再び車上の人となり、打当温泉に向かう。マタギの湯という大きな温泉施設(かなりいい温泉でした)で入浴の後、焼石岳の登山口に向かってクルマを飛ばす。昼食もコンビニで買い込んだ弁当を車内で運転しながら食べるという忙しさ。秋の夕暮れに追い立てられるような気分だ。
焼石岳中沼駐車場へは少々荒れた林道を走る。対向車があると苦労しそうな狭い道だ。駐車場には数台のクルマが残っていた。トイレの完備した登山口から出発すると、道は緩やかに高度をあげて、中沼、上沼とビューポイントを通過していくが、今日はまるで墨絵のように色のない世界だ。湖面に映る山が絶景らしいがその片鱗も見えない。ツブ沼からの道を合わせると程なく銀名水に着いた。そしてその湧き水のすぐ奥に、銀名水避難小屋があった。前には小沢が流れて、ビールを冷やせと言わんばかり。今夜も小屋は我々だけの貸しきりだった。
銀名水避難小屋も素晴らしい小屋だった。トイレは水洗で登山口のトイレより遥かに清潔で気持ちがいい。窓も二重窓で結露もなく綺麗だ。石油ストーブがあって、ポリタンクに石油を入れて持ってくれば寒い時期も快適に過ごせそうだ。ツブ沼からは積雪期も登って来られるようで、スノーシュー登山もできそうだ。
24日 晴れ後曇り
銀名水避難小屋5:25ー焼石岳頂上6:35〜42ー避難小屋7:50〜8:09ー登山口駐車場9:40=役内登山口12:21ー神室山頂上16:41〜43ー神室山避難小屋(泊)16:46(水場往復15分) (実働3時間55分+3時間56分)
夜明け前に起床して朝食を済ませ、少し明るくなってから出発する。今日も行程は忙しい。登りながらご来光を待つ。やがて昨年同じ無人小屋の旅で登った五葉山の右横から太陽が姿を現した。上空は雲ひとつない快晴だが、下界は雲海の底だ。登山道は緩やな勾配で高度をあげていく。周囲からは盛んに沢の音がする。水の豊富な山なのだろう。
頂上の下にある泉水沼に着いて辺りを見渡せば、隣の横岳は結構紅葉に染まっている。焼石岳も部分的には色づいている。横岳との鞍部にでると西側の展望がひらけて、鳥海山がその秀麗な姿を現した。なるほどコチラから見ると素晴らしい成層火山だ。出羽富士の名はダテではない。この頃になると頂稜にガスが去来して、時折ブロッケンが見える。やがて霧の吹き抜ける頂上にあっけなく到着した。小屋から1時間あまりだ。荷物が軽いと早いのね。
頂上では時々流れていく霧の合間に、岩手山や早池峰山などが見えてさすがは1等三角点峰、展望の山であることが伺える。花も素晴らしいという話なので、今度はそんな時期に来ましょうと話しあった。
頂上を辞してグングンと下る。小屋で荷物を詰めなおして駐車場へ向かう。途中で続々と登ってくる人たちに出会う。地元の方の話では、今日は9月になって初めてというくらいの晴天なのだそうだ。駐車場に着けば、スペースは8割方埋まっている。そうなると林道でのすれ違いが心配だったが、時間が半端に遅いせいか、一台も出会うことなく国道まで降りることができた。ここからは神室山の役内登山口まで直線距離なら40キロほどなのに、道がないので一旦下界まで降りて再び登り直すことになる。80キロ近くも走らねばならない。
今日も又コンビニで買い出しをして、運転しながら昼食だ。コンビニではそばに来た地元の小奇麗なお姉様が、顔を曇らせていた。汗くさかったのだろう。だが今日は入浴している時間的余裕はない。実は神室山が今回一番の難関なのだ。
神室山役内登山口までの林道入り口が判断できず、少々時間を無駄にしたが、何とか登山口駐車場に着いた。もう正午を過ぎてしまった。これからコースタイム4時間の道を登らねばならない。もし万が一、時間がかかって日没が近づいても、尾根道なら明るいだろうと、前神室山を経由するパノラマコースで登ることにした。多くの登山者は沢コースを登るそうで、出会った日帰り登山者に聞くと、今日は全員沢道を登ったようで、我々が今日初めてすれ違ったパーティなんだそうだ。その後も何組かの登山者とクロスし、どうやら駐車場にあったクルマの台数分のパーティとすれ違ったことになりそうだ。つまり小屋は空いているということだ。
尾根に登りつくまでは今回の山行では初めての結構な急坂で、だいぶ絞られた。尾根に出てからは少々笹薮がうるさかったり、一つ一つのピークをマジメに登って降りてで、まず目標にしていた前神室山までが遠かった。ずっと樹林帯の中で、「パノラマコース」とは名ばかりだと思っていたのだが、ようやく前神室山に立つと少し展望が良くなって、更に進んで前神室山を振返ると、その先に端正な鳥海山が見えた。
やがて神室山の頂稜の一角に登りつく。少し進むと隣県三県の知事の名前入りプレートが嵌めこまれた岩峰がある。てっきり頂上かと思ったが、どうも様子がおかしい。本当の頂上はまだかなり先だった。やがて本当に、ようやく、神室山頂上に辿り着いた。写真を撮ってすぐに避難小屋に向かう稜線に入るとあっけなく小屋が見えた。すると小屋には新ハイのメンバーが先着している。雑誌の記事でお馴染みで、最近電脳登山部にご入会頂いたM女史のご一行が、一階フロアに陣取っており、すっかり出来上がっている。我々はまず水取りに行ってから二階に泊まることにした。
水場へは小屋前から明瞭な踏み跡をトラバース気味に南斜面へと下っていく。すると踏み跡が横切る浅い窪へ太いロープが下がっている。ちょっと迷ったが、わざわざロープを設置したということはコチラのほうがいいのかと、ロープを伝って激しく急な斜面をズリズリと滑り落ちるように下ってみた。程なくロープは終わり、あとは非常に不安定な急斜面を沢に向かって下った。沢状を下ると左岸から枝沢が合流してそのすぐ下流に水流が現れた。踏み跡をそのままたどるとこの枝沢に出て、それを下ってくれば同じ所に出るのだろう。ロープを伝って降りれば水流へのショートカットになるのだろう。ともかく明るいうちに水が確保できた。再び激しく急な斜面を登って小屋に戻り、やれやれと夕食の支度を始めた。
神室山避難小屋は数年前に再建された新しい綺麗な小屋だ。トイレもバイオトイレで居室にいる限りは臭いもなく、快適に過ごせる。ただ翌朝気がついたのだが、窓が二重窓ではないため、結露が激しく窓枠に黒カビがあるのか黒くなっている。先代の小屋も老朽化して使用禁止になる前に、避難小屋のガイドブックで湿気が多くて不快と評されていた。小屋の張り紙には、天気の良い日は窓を開けて換気にこころがけてくれと要望しているが、そんなことより二重窓にすれば相当湿気は軽減されるのではないか。改善しないと小屋の寿命にも影響しそうだ。
外はずっと霧が濃くて真っ白な世界だったが、夜半過ぎに目を覚ますと霧の合間に美しい星空が望めた。新庄市方面の街明かりも意外に近く見えた。この避難小屋のロケーションは抜群だ。
25日 曇り後晴
神室山避難小屋7:01ー水場8:44〜50ー登山口10:29 (実働3時間12分)
さあ今日は帰るだけだ、と私達はのんびりしていたが、夜明け前、霧の深い中をM女史ご一行は杢蔵山に向けて神室連峰縦走、コースタイム11時間の長旅に出発していった。
お世話になった神室山避難小屋を後に、再び神室山に登って沢コースを下山する。頂稜には雲がかかって視界は効かないが、下界には日差しがあるようだ。頂上からはしばらく尾根筋を辿る。神室山の頂上周囲の稜線は、灌木や草でカモフラージュされているがやや細く、時に「アルペン的な」と評されるのはそんな地形が影響しているせいなのだろう。
やがて二重山稜のような地形になって草原が広がる。更に進むとようやく急斜面になって、沢筋への下降が始まる。ひとしきり急斜面を注意しながら下ると、水場が現れた。その頃には日差しも届き始めており、水がありがたい。のんびり休憩にして冷たい水で喉を潤した。再び歩き出せばすぐに第三渡渉点だ。飛び石伝いに対岸に渡ると右岸から綺麗な滝が落ちている。
ここからは沢沿いの道を、ゆっくりと下っていく。すれ違う人たちも増えてきた。今日も神室山は賑やかだ。時々枝沢に回りこむと、急な岩場が出てきたりで緊張するが、概ね一般的な登山道レベルの道を歩いていく。第二渡渉点、第一渡渉点にはちょっと揺れるが立派な吊り橋がかかっていて容易に対岸に渡ることができる。かつては渡渉していたのだろうが、沢を見るととても飛び石伝いには渡れない。靴を脱いで裸足で渡っていたのだろう。ありがたい橋だ。
やがて樹間のプロムナードコースになり、程なく駐車場に戻った。スペースはほぼ満杯だ。4日間の無人小屋の旅はこれにて終了。早々にクルマに乗り込み、秋ノ宮山荘というなかなか豪華な宿泊施設で二日ぶりに汗を流し(入浴料600円也、安い!)、併設のレストランで昼食を摂って帰路についた。宇都宮で渋滞に捕まったので、国道4号線に降りて名物の餃子とラーメンで早めの夕食にして、2名の参加者を小山駅まで送ってから熊谷へと戻った。
今回の総走行距離約1300キロ。これにてとりあえず「豪華東北無人小屋の旅」お開きといたします。というのも気軽に登れる豪華無人小屋はもう見当たらないんです。計3回、8つの小屋に泊まり、のべ23人にご参加いただきました。ありがとうございました。2クール目は季節を変えてできたらいいのですけどね。
Script and Photo by O.
---- 小さな写真をクリックすると大きな写真が見られます。写真をスクリーンショーにして見ることもできます。 ---- |