巻機山米子沢遡行

2017年10月8日(日) 前日泊 参加者:4名 費用:5900円

  • 上越国境の名渓に足並みの揃った4人で偵察山行。
  • 先日の赤木沢に比べて、滝の登攀がより難しく、行程が長いとの評価。
  • ともあれヤブコギなしで紅葉の巻機山に登りつくこの沢はやはり別格だった。

 
行程
熊谷14:30=六日町(泊)=巻機山麓駐車場7:10ー入渓点7:24〜28ー(遡行時間実働3:46)ー遡行終了点12:29〜46ー巻機山避難小屋12:51ー駐車場15:08=各自自宅 実働5時間57分

 私が学生時代に計5回、いつも10月最初の週末に通った米子沢は、「沢登り初めてですぅ〜」という初心者部員を連れて、沢登りを好きにさせるために登る沢だった。登攀用具など無用で、体育ジャージ(濡れてもすぐ乾く!)に農業用地下足袋とわらじという足回りで、ちょいちょいと登って「どうだ沢登りはいいだろう、楽しいだろう」と先輩ヅラするには恰好のコースで、補助ザイルさえ持たなかった。それが昨今、どこの沢でもガイドブックには「ロープ使用」などという言葉が溢れ、集まる人たちはみなジャラジャラと金物をぶら下げて、「一ノ倉の岩壁でも登るのかい」と聞きたくなるような完全装備で登っている。もちろん米子沢も例外ではない。ということで、どれほど昔と様子が違うのか、そして私も年をとってどれほど感覚が違うのかを確認するために、何かと助けてもらえるメンバーに集まってもらい、試登してみようと紅葉の巻機山に出かけた。

 前夜はいつもの天然温泉付きリゾートホテルで英気を養い、養いすぎてちょっと寝坊して7時過ぎに巻機山山麓駐車場に着いた。が既に駐車場は満杯。途中の民宿には観光バスまで停まっているという有様で今日の巻機山は大混雑だ。さっさと準備を整えて、入渓点の堰堤まで林道を歩く。ツアーと思しき10名ほどの団体さんもいる。妙にザックがデカイし、マットまで持っている。???と思ったが、彼らの歩きを見ていて合点がいった。要するに日帰りで米子沢を登るのが無理なのだ。色々なところでザイルを出し、いちいち確保しながら登るのだろう。で、登攀用具以外に避難小屋泊まりあるいはテント泊の装備を持っているので、あの荷物なんだろう・・・?。ただ、米子沢左岸支流から県境稜線を越えて利根川源流の支沢を下降してまた登り返すルートをとる人もいるようだ。そんな山行なのかしらとも思うが、とりあえず日帰りの人に順番譲ってねと心の中でお願いして、河原歩きの間に追い越した。もちろん二度と会うことはなかった。
 ところで私はと言えば最初の滝で、すでにアレレとなった。どうしたらいいか全くわからない。滝の形が派手に変ったなどということはあるまい。つまりこちらの感覚が相当に鈍っているのだ。どこから行こうかと逡巡している間に、後続の遡行者が来た。これ幸いと先行してもらい見ていると、「そこか」というところを登っていった。山岳救助隊の腕章をしている二人連れ。若い隊員の方はなんと私達電脳登山部で大人気の、日進ゴム製「ハイパーV」のスニーカーで登っている。日進ゴムの青○さんにメールしてあげよう、山のプロもハイパーVを使っているよと。
 その後はあまり考えすぎることもなく、順調に滝を越えていくことができた。ただ、「こんなに荒れているところがあったかなぁ」とずっと感じていた。幾つかの滝は砕石の中に埋もれているのではないかと心配にもなった。数年前に上部で大崩壊がおこり、岩が沢を埋め尽くして、「米子沢もこれで終わりだ」などと言われていた時期があった。しかしその後見事復活して往年の魅力を取り戻したとはいうものの、まだ一部にはその爪痕が残っているのでは思っていたのだ。しかしゴルジュ帯に入る頃からはガレキも消え失せ、実に快適な遡行になった。そしてお目当てのご褒美「大ナメ」。延々とナメ床が続く。だが、時々フェルトが滑る。岩盤の弱点、すなわち傾斜の緩い箇所、キズ、割れ目のあるところなどを選んで歩みを進めないと滑ってドキリとする。わらじ履きの頃にはほとんど何も気にせず歩いても大丈夫だったのに・・・と思うが、今や「わらじ」は高級品。実用的にはフェルトの時代なのだから仕方ない。
 大ナメを抜けて源流帯に入ると、この時期だけのもうひとつのご褒美、巻機山の素晴らしい紅葉が我々を迎えてくれた。避難小屋への踏み跡を確認して、沢の中で名残惜しく休憩する。かつては右俣も左俣も巻機山の稜線まで、草原の中に静かに消えていく米子沢を最後まで辿ったものだが、多分その頃の我々の行いも影響したのだろう、植生の破壊が著しいとの由で立ち入り禁止の措置が取られた。おかげで美しい紅葉の山肌が保全され、米子沢遡行にこの時期だけの特別な景観が残された。沢登り愛好家としては、遡行最後の一滴を見たいという気持ちもあるが、これもまた仕方のないことだろう。
 避難小屋前に出て、昼食の弁当を広げるたくさんの登山者の間をすり抜けて下山の途につく。ハイパーVを履く3人がグイグイと下る。新調した登山靴がこれを追う。前にいる人たちを全員追い抜いて、小屋から実働2時間足らずで駐車場に戻った。

 先日北アルプス赤木沢を遡行した参加者2名の感想としては、米子沢の方が滝の登攀が難しく、標高差もかなり高く、行程が長いので、技術、体力ともに難易度は高いだろう、それなりのトレーニングが必要とのことでした。今後米子沢を希望する会員は、そのつもりでトレーニング山行にご参加ください。ガイド登山ではないので、ザイルで確保することはあっても、引っ張り上げる(漁船からマグロを吊り上げる)ようなことはしません。滝はほぼ自力で登っていただきます。皆で進化していきましょう。

Script by O. and Photo by K.(K.), Y.(Y.) and O.

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